多様な家族の物語

子どもの「困りごと」を夫婦で乗り越える:父親ができる具体的なサポート

Tags: 発達特性, 子育て, 父親の役割, 夫婦連携, 発達支援

忙しい日々の中で考える、子どもの発達特性への向き合い方

日々の仕事に追われる中で、お子さまの「育てにくさ」や特定の「困りごと」に直面し、「一体どうすれば良いのだろうか」「自分には何ができるのだろうか」と悩んでいらっしゃる父親も多いのではないでしょうか。特に、お子さまに発達特性があるかもしれない、あるいは既に診断を受けている場合、その特性への理解や適切な関わり方について、どのように学べば良いのか、どうすれば家族として支えていけるのか、といった課題は少なくありません。

限られた時間の中で、情報収集や専門家との連携、そして何よりお子さまとの丁寧な関わりを継続していくことは、決して容易ではありません。また、「妻に任せっきりになっているのではないか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、お子さまの「困りごと」に対し、父親がどのように向き合い、夫婦でどのように力を合わせて乗り越えていくかについて、私自身の体験を通して得られた気づきや具体的な行動についてお話しします。多忙な中でも実践できるヒントが見つかれば幸いです。

我が家の「困りごと」と夫婦の始まり

私たちの場合、子どもが小学校に入学する頃から、集団行動での難しさや特定の感覚への過敏さ、強いこだわりといった特性が目立つようになりました。当初は「個性だろう」「いずれ落ち着くだろう」と考えていましたが、学校生活でのつまずきが増えるにつれて、夫婦間で不安が募っていきました。

妻は以前から子どもの様子に気づき、情報収集を始めていましたが、私は仕事の忙しさにかまけて、正直なところ真剣に向き合えていませんでした。「大丈夫だよ」「気にしすぎだよ」と、根拠のない言葉で妻の不安を打ち消そうとしていた時期さえあります。

しかし、担任の先生から具体的に学校での困りごとを伝えられたこと、そして何より、一人で悩みを抱え込み、疲弊していく妻の様子を見るにつけ、これは私一人ではどうにもならない、夫婦で一緒に取り組むべき課題だと痛感しました。これが、私が子どもの発達特性と本格的に向き合い、夫婦での連携を意識し始めたきっかけです。

夫婦で「困りごと」を理解し、乗り越えるための具体的なステップ

そこから、私たちは夫婦でいくつかの具体的なステップを踏み始めました。

1. 情報の共有と共通理解の構築

まずは、妻が集めていた情報(書籍、インターネット記事、他の保護者の体験談など)を一緒に読むことから始めました。専門用語が出てきた際には、お互いに質問したり、一緒に調べたりしました。「感覚過敏とは具体的にどういうことか」「なぜ急な予定変更が苦手なのか」など、具体的な特性について、夫婦で同じ情報源を見て話し合うことで、漠然とした不安が少しずつ明確になり、共通の理解が進みました。

また、専門機関への相談を検討する際も、一方的に任せるのではなく、「どんな情報を伝えようか」「どんなことを聞いてみようか」と事前に話し合いました。

2. 感情の共有と傾聴

情報だけでなく、お互いの感情を率直に話し合う時間も設けました。妻からは「一人で抱え込んでいるのが辛い」「どうしてあなただけ大変さが分からないの?」といった本音を聞かせてもらいました。私からも、「どう関わればいいか分からないのが怖い」「無力感を感じる」といった正直な気持ちを伝えました。

重要なのは、相手の感情や考えを否定せず、まずは「聴く」ことに徹することでした。特に忙しい父親にとって、じっくりと妻の話に耳を傾ける時間を作るのは難しいかもしれませんが、たとえ短時間でも、お互いの心の内に寄り添うことが、連携の第一歩だと感じています。

3. 具体的な役割分担と「父親にしかできないこと」

特性理解が進むにつれて、具体的な子育ての「困りごと」への対応策を夫婦で話し合い、役割分担を決めました。例えば、特定の場所への外出が難しい場合、妻が事前に情報収集し、私が子どもの不安を和らげるための具体的な準備(持ち物の確認、声かけの仕方など)を担当するといった具合です。

また、「父親にしかできないこと」として意識したのは、体力を使った遊びや、社会のルールを分かりやすく伝える役割です。妻は日々の細やかなケアや学校との連携を担うことが多かったため、私は外での遊びや、時には厳しさも伴う社会性の指導などを担当することで、夫婦でバランスを取りました。

全てのタスクを完全に分けるのは不可能ですが、「これは私が担当する」「これについては協力して取り組む」という意識を持つだけで、お互いの負担感が軽減されました。

4. 外部リソースの活用への積極的な関与

専門医の受診、療育施設の検討、スクールカウンセラーへの相談など、外部リソースの活用は非常に重要です。これらについても、可能であれば夫婦で一緒に参加する、難しければ妻からの報告を真剣に聞き、疑問点を質問するといった形で積極的に関与しました。

特に、専門家から直接話を聞くことは、インターネットの情報だけでは得られない深い理解や具体的なアドバイスにつながります。仕事の調整が必要な場合もありますが、子どもの将来を考えれば、これほど重要な時間は他にないと割り切ることも必要です。

まとめ:夫婦で支え合う「チーム」として

お子さまの発達特性や「困りごと」への向き合い方は、決して一人で抱え込むべきものではありません。特に多忙な父親にとっては、物理的な時間や知識の不足を感じることもあるでしょう。しかし、最も身近なパートナーである妻と連携し、「チーム」として取り組むことで、乗り越えられない壁はないと私は信じています。

情報共有、感情の傾聴、具体的な役割分担、そして外部リソースへの連携。これらはどれも、特別なスキルが必要なことではありません。まずは、妻の話に耳を傾ける数分から、あるいは一緒に一冊の本を開くことから始めてみてはいかがでしょうか。

父親が積極的に子どもの特性理解に関わる姿勢を見せることは、妻にとって大きな精神的な支えになります。そして、夫婦で協力し、試行錯誤を重ねる過程そのものが、家族全体の成長につながるのだと感じています。完璧を目指す必要はありません。今日からできること、一歩ずつ、夫婦で共に歩んでいきましょう。