子どもの「友だちとのかかわり」:父親が試した小さな手助けとその効果
友だち関係の悩みと、父親にできること
子どもの成長過程において、友だちとの関わりは重要な要素の一つです。しかし、発達特性のあるお子さんの場合、周囲の子どもたちとのコミュニケーションの取り方や、遊びのルール理解などに難しさを感じ、友だち関係でつまずくことがあります。
「うちの子だけ輪に入れないようだ」「どうやって他の子と話せば良いか分からないと言っている」「誘ってもらえない」といった悩みを耳にしたり、実際に目にしたりすることは少なくありません。多忙な日々を送る父親にとって、こうした子どもの様子を見ると、「何かしてあげたい」と思う一方で、「具体的にどうすれば良いのだろうか」「時間がない中で何ができるのか」と悩ましいと感じるかもしれません。
この記事では、私自身の経験に基づき、発達特性のある子どもの友だち関係の悩みに対し、父親としてどのように関わり、どのような「小さな手助け」を試したのか、そしてそれがどのように子どもの変化につながったのかをご紹介します。
具体的なエピソード:公園での一場面
小学校低学年の頃の息子は、公園に行くと遊具で一人で遊ぶか、他の子どもたちの遊びを少し離れた場所で見ていることがよくありました。他の子が話しかけても、どう返事をして良いか分からず黙ってしまったり、自分の好きな話題だけ一方的に話してしまったりすることが見受けられました。
ある日、数人の子どもたちが鬼ごっこをしていた際、息子も参加したい様子でしたが、どう声をかけて良いか分からず、じっと見ているだけでした。私はそれを見て、「何か手助けが必要かもしれない」と感じました。しかし、いきなり私が間に入って「入れてあげて」と言うのは、かえって息子自身が学ぶ機会を奪ってしまうのではないか、という懸念もありました。
父親が試した「小さな手助け」
そこで私が試したのは、大げさな介入ではなく、息子と一緒に状況を整理し、次の一歩を考えるという「小さな手助け」でした。
- 状況と言葉の「見える化」: 公園からの帰り道、私は息子に「さっき、鬼ごっこに入りたそうに見ていたね」と、まずは事実を伝えました。息子が「入りたかったけど、なんて言えばいいか分からなかった」と答えたので、「そっか。もし入りたいときは、『入れて』って言ってみるのはどうかな?」と、具体的な言葉を提案しました。
- 「ソーシャルスキルトレーニング」の要素を取り入れる: 家にいる時などに、他の子どもへの声かけ方や、話しかけられた時の返事の仕方を、短いロールプレイング形式で練習しました。例えば、「ねぇ、一緒に遊ぼう」「うん、いいよ」といった簡単なやり取りから始めました。「相手に聞こえる声で言うと伝わりやすいね」といった具体的なフィードバックも加えるようにしました。
- 共通の「好き」を糸口にする: 息子が特定のキャラクターや遊びに強い関心があることを利用し、「もし同じものが好きな子がいたら、『〇〇知ってる?』って話しかけてみるのも良いかもね」と提案しました。共通の話題は、最初のコミュニケーションのハードルを下げる手助けになるからです。
- 遊びの「ルール」を一緒に理解する: 鬼ごっこやかくれんぼなど、一般的な遊びでも、発達特性のある子にとってはルールの理解や変化への対応が難しいことがあります。遊び始める前に「この遊びはどんなルールかな?」と一緒に確認したり、分からなくなったら休憩してこっそり私に聞きに来ても良いことを伝えたりしました。
これらの手助けは、一度にすべてを行ったわけではありません。息子の様子を見ながら、少しずつ、根気強く続けました。一日数分、週末に少し時間を取る程度で、多忙な中でも取り組みやすい形で行いました。
小さな手助けがもたらした変化
これらの「小さな手助け」を続けるうちに、息子にいくつかの変化が見られました。
すぐには他の子の輪に入れなくても、以前よりは短い時間で「入れて」と声をかけられるようになりました。また、話しかけられた時に、すぐに黙り込んでしまうのではなく、「うん」「そうだね」といった短い返事でも返すことができる場面が増えました。
最も嬉しかったのは、公園で自分から他の子に話しかけ、一緒に遊べたという経験を、息子自身が誇らしげに話してくれたことです。成功体験を積むことで、少しずつ自信がついているように感じました。もちろん、いつもスムーズにいくわけではなく、失敗したり、うまくいかずに落ち込んだりする日もあります。しかし、失敗した時も「どうすれば良かったかな?」「次はこうしてみようか」と、一緒に振り返ることで、次に繋げる学びと捉えられるようになってきました。
妻ともこれらの息子の変化や、私が行った手助けについて共有し、「こういう時はこう声かけようか」「パパがこういう練習してくれたから、私からも声をかけてみるね」と連携できたことも、息子にとって大きな安心材料になったと感じています。
読者の皆さんへ:完璧でなくても、できることから
子どもの友だち関係の悩みは、親として見守るのが辛く、どうすれば良いか悩むことが多いテーマかもしれません。しかし、多忙な中でも、特別な時間やスキルがなくても、父親としてできる「小さな手助け」は必ずあります。
大切なのは、子どもが困っている状況を理解しようとすること、そして、解決策を教え込むのではなく、子どもと一緒に考え、乗り越えるためのヒントを提示することです。短い時間でも、子どもの話に耳を傾けたり、具体的な言葉かけや行動を一緒に練習したりする時間は、必ず子どもの力になります。
完璧を目指す必要はありません。失敗しても大丈夫です。できることから一つずつ試してみてください。そして、その過程や小さな変化を、ぜひ夫婦で共有してください。多忙な父親の皆さんの「小さな手助け」が、お子さんの成長の一歩に繋がることを願っています。