発達特性のある子との外出:父親が実践した安心できる準備と声かけ
発達特性のある子との外出に感じる不安
子どもの発達特性によって、私たちは日常の様々な場面で子育ての難しさを感じます。特に、公共の場での外出は、予測不能な状況や周囲の視線が気になり、少なからず不安を抱く父親もいらっしゃるのではないでしょうか。
私もかつてはそうでした。週末に子どもと二人で近所のスーパーへ行くだけでも、「騒いだらどうしよう」「急に走り出したら危ないな」といった心配が頭をよぎり、つい億劫になってしまうこともありました。
しかし、子どもにとって外出は刺激的な学びの機会ですし、私自身も子どもとの時間をもっと楽しみたいという気持ちがありました。そこで、試行錯誤を重ねながら、少しでも外出が安心できるものになるよう、いくつかの「準備」と「声かけ」の工夫を実践してきました。
ある日のスーパーでの出来事
例えば、以前スーパーへ行った際のことです。レジの列に並んでいる間、子どもが突然「帰りたーい!」と大声で叫び出し、床に寝転がろうとしました。周囲の買い物客からの視線を感じ、「まずい」と焦りましたが、どう対応すれば良いのかすぐに思いつかず、抱きかかえて列から離れるのが精一杯でした。その日は必要なものが買えず、親子ともに疲れて帰宅した記憶があります。
このような経験を経て、ただ「落ち着いて」「静かにして」と言うだけでは難しいのだと痛感しました。子どもの特性を理解し、彼らが安心して過ごせるように環境を整え、事前に見通しを持たせることが重要だと気づかされたのです。
父親が試した具体的な「準備」と「声かけ」
それ以来、私は外出前にいくつかの工夫を取り入れるようになりました。
事前の準備
- 目的と簡単なルールを伝える: 「これからスーパーへ行って、今日の夜ご飯に使うニンジンを買うよ」「お店の中では歩いて移動しようね」など、短く具体的に伝えます。言葉だけでなく、絵や写真などの視覚的な情報も併用すると効果的な場合もあります。
- 持ち物を工夫する: 子どもが安心できるお気に入りの小さなぬいぐるみや、手持ち無沙汰にならないような簡単なパズル、感覚を落ち着かせるための噛むおもちゃなどを持ち歩くようになりました。また、喉が渇いた時にすぐ飲めるよう水筒も必須です。
- 休憩場所を決めておく: 大きなショッピングモールなどへ行く際は、事前にベンチの場所や休憩できるカフェなどをチェックしておきます。子どもが疲れたり落ち着かなくなったりしたときに、すぐに移動できる場所があると安心感が違います。
外出中の「声かけ」
- 肯定的な言葉で具体的に伝える: 「走らないで」ではなく、「歩こうね」。「静かにして」ではなく、「今はお話を聞く時間だよ」のように、どう行動してほしいかを肯定的な言葉で具体的に伝えます。
- 見通しを持たせる: 「あと3つお店を見たら公園に行こうね」「この電車を降りたらすぐにお家に帰るよ」など、次に何が起こるかを伝えます。待ち時間には、「時計の針がここまで来たら次だよ」といったように、視覚的に時間の経過を示すこともあります。
- できた行動を具体的に褒める: 小さなことでも良いので、目標としていた行動ができたらすぐに褒めます。「お店の中をちゃんと歩けたね、すごいね」「電車の席に座っていられたね、えらい!」など、具体的にどの行動が良かったのかを伝えると、子どもも理解しやすくなります。
夫婦での情報共有と連携
これらの工夫は、妻との情報共有や連携があってこそ効果を発揮すると感じています。例えば、外出前に子どものその日の体調や気分を妻に確認したり、過去に外出先で困った時の状況や試した対応について話し合ったりしました。また、外出中に困難な状況になった際に、どちらがどう対応するか、あらかじめ役割分担を決めておくと、いざという時に慌てずに済みます。一人で抱え込まず、夫婦で「チーム」として取り組む姿勢が大切だと痛感しています。
まとめ:小さな成功体験を積み重ねる
もちろん、全ての外出がスムーズにいくわけではありません。予期せぬ出来事が起こることもありますし、せっかく準備したことがうまくいかない時もあります。しかし、以前のように途方に暮れることは減りました。事前の準備と具体的な声かけによって、子どもも私も、少しずつ「外出」という行為に対して安心感を持てるようになってきたからです。
大切なのは、完璧を目指すのではなく、小さな成功体験を積み重ねていくことだと感じています。少しでもうまくできたこと、以前より改善された点に目を向け、子どもと一緒に自分自身も褒めてあげる。そうすることで、親子の自信につながり、次の一歩を踏み出す勇気になります。
もし、あなたも発達特性のあるお子さんとの外出に不安を感じているのであれば、まずは一つ、今日から試せそうな「準備」や「声かけ」の工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと、子どもとの外出が、少しずつですが、より安心できる楽しい時間へと変わっていくはずです。