発達特性のある子への「ダメ」の伝え方:忙しい父親が学んだこと
「ダメ」が伝わらない? 多忙な父親が直面した壁
子育てにおいて、子どもに危険なことや不適切な行動を止めてもらうために、「ダメ」と伝えることは日常的にあります。しかし、子どもの発達特性によっては、単に「ダメ」と言うだけでは意図が伝わりにくかったり、かえって反発を招いたりすることがあります。
私自身も、仕事で疲れて帰宅し、時間がない中で子どもの「困った行動」に直面すると、つい反射的に強い口調で「ダメだろ!」と言ってしまい、子どもがフリーズしてしまったり、癇癪を起こしてしまったりすることがありました。なぜ伝わらないのだろう、どうすれば分かってもらえるのだろうと、頭を抱える日々でした。
特に、言葉での指示が入りにくい子や、理由が理解しにくい子、あるいは感情の切り替えが苦手な子など、発達特性の現れ方は様々です。一般的な「ダメ」の伝え方が通用しない中で、多忙な中でも少しずつ試行錯誤し、私なりに「伝わりやすい『ダメ』の伝え方」として効果を感じた3つの工夫をご紹介します。
忙しい父親が試した3つの工夫
1. 「どうしてダメなのか」を具体的に、短く伝える
以前の私は、「ダメ!」と制止するだけで、なぜダメなのかを十分に伝えていませんでした。例えば、公園で他の子の遊具に勝手に乗ろうとした時、「ダメ!」と言うだけでは、子どもは何がいけないのか理解できません。
そこで意識したのは、「ダメ」の後に理由を具体的に、そして子どもが理解しやすい短い言葉で添えることです。
「〇〇くんの遊具だから、勝手に乗っちゃダメだよ。順番だよ。」 「ここでは走るとぶつかって危ないからダメだよ。公園の広場で走ろうね。」
このように、理由と合わせて伝えることで、子どもは何を根拠に「ダメ」と言われているのかを少しずつ理解するようになりました。忙しい中ではつい省略しがちですが、この一言を添えるだけで、子どもの納得感が変わることを実感しました。
2. 代替行動を具体的に示す
「ダメ」と言われただけでは、子どもは何をすれば良いか分からず立ち尽くしたり、別の不適切な行動に移ったりすることがあります。特に、行動の切り替えや見通しを立てることが苦手な特性がある場合、この傾向は顕著でした。
そこで私は、「ダメ」な行動を伝えるだけでなく、「代わりにこうしようね」という代替行動を具体的に示すようにしました。
例えば、家の中でボールを投げて遊ぼうとした時は、「家の中で投げたら物が壊れるからダメだよ。ボール遊びは外でしようね。代わりに、この積み木で遊ぼうか。」というように、具体的な代替案を提示しました。
この方法を取り入れることで、子どもは禁止された行動に固執するのではなく、次に取るべき行動をスムーズに受け入れやすくなりました。「何をすれば良いの?」という子どもの内なる問いに答えるイメージです。
3. 肯定的な言葉で「こうしよう」と伝える練習
常に否定的な言葉で「ダメ」「~するな」と伝えるのではなく、「こうすると良いよ」「~しようね」という肯定的な指示に置き換える練習もしました。これは私自身がネガティブな言葉ばかりを使わないようにするための工夫でもありました。
例えば、食事中に立ち歩こうとしたら、「立ち歩いちゃダメ」ではなく、「椅子に座って食べようね。そうするとご飯が美味しいよ。」と声かけを変えてみました。物を乱暴に扱っている時は、「乱暴にしないで」ではなく、「優しく触ってあげようね。」と伝えました。
否定形から肯定形への言い換えは、初めは難しく感じましたが、意識して続けるうちに慣れてきました。この変化は、子どもに伝わりやすいだけでなく、私自身の気持ちの面でも、子どもとの関わりが少し前向きになったように感じています。
夫婦での情報共有と試行錯誤の重要性
これらの工夫は、すぐに効果が出たわけではありません。何度も失敗し、親子共々疲れてしまうこともありました。また、私だけが実践しても、妻が別の伝え方をしていると子どもが混乱することもあります。
そのため、夫婦間で「今日はこんな声かけを試してみたよ」「こういう時はどう伝えるのが良いかな」と短い時間でも共有する時間を持ちました。完璧な正解はありませんが、家族で共通認識を持ち、伝え方を統一しようと意識するだけでも、子どもは安心しやすくなります。
まとめ:完璧ではなく、「できることから」
発達特性のある子への「ダメ」の伝え方は、その子の特性や状況によって最適解が異なります。今回ご紹介した方法はあくまで私自身の経験に基づいた一例であり、全ての子に当てはまるわけではないかもしれません。
しかし、「ダメ」と一方的に伝えるのではなく、「どうすれば伝わるか」という視点で少しずつ工夫を凝らすことは、子どもとのコミュニケーションをより良いものにするための大切なステップだと感じています。
多忙な日々の中で、毎回完璧に実践することは難しいかもしれません。しかし、「どうしてダメなのかを添える」「代替案を示す」「肯定的な言葉を使う」といった小さな工夫を一つずつ試してみることで、子どもへの伝わり方が変わり、親子関係が少し楽になるきっかけになるかもしれません。
まずは、できることから一つ、試してみてはいかがでしょうか。