過保護にならない自立支援:父親が試した発達特性のある子の「自分でできた」を増やすコツ
変化を促す自立支援への第一歩
子どもの成長とともに、「自分でできること」を増やしてほしいと願うのは多くの親共通の思いでしょう。特に発達特性のあるお子さんの場合、特定のタスクの習得に時間がかかったり、手順を理解するのが難しかったりすることがあります。良かれと思って手伝いすぎると、かえって自分でやろうとする機会を奪ってしまうのではないか。しかし、忙しい日々の中で、どこまで見守り、どこから手を出せば良いのか、どのように教えれば効果的なのかと悩む父親は少なくありません。
この記事では、多忙な父親が家庭でできる、発達特性のあるお子さんの「自分でできた」を増やすための具体的な関わり方や、過保護にならずに自立を促すヒントを、自身の経験を交えてご紹介します。
朝の支度に見る「手伝いすぎ」の罠
我が家の息子も、朝の着替えや洗面、学校の準備に時間がかかり、よく手助けを求めてきました。急いでいる時はつい手を出してしまいがちですが、ある時、ほとんど全ての身支度を私が手伝っていることに気づきました。これではいけない、このままでは自分で何もできなくなってしまう、と感じたのです。
この状況を変えるために、私はまず「どこからどこまでを自分でやってもらうか」を具体的に決めました。そして、そのタスク(例:着替え)をさらに小さなステップ(肌着を着る、Tシャツを着る、ズボンを履くなど)に分解しました。
見える化と声かけの工夫
次に試したのが「見える化」です。息子と一緒に、身支度のステップをイラストや簡単な言葉で書いたチェックリストを作成し、壁に貼りました。終わったステップには自分でチェックを入れてもらうようにしました。
また、声かけの方法も意識的に変えました。以前は「早く着替えなさい」「まだ終わってないの?」といった指示や催促が中心でしたが、これを「次はズボンだね」「チェックリストの次の項目は何かな?」など、タスクを促す言葉や、自分で確認することを奨励する言葉に変えました。
最初は時間がかかり、私自身もイライラすることもありました。しかし、チェックリストを見て自分で次の行動を判断したり、「見て、自分でできたよ!」と嬉しそうに報告してくれたりする息子の姿を見るうちに、このアプローチの手応えを感じるようになりました。全てを完璧にこなせなくても、一つでも自分でできたことを具体的に認め、「すごいね、ここまで自分でできたんだね!」と伝えるように心がけました。
学校の準備とお小遣い管理での応用
この経験は、学校の持ち物準備やお小遣い管理といった他の場面でも応用できました。持ち物リストを一緒に作成し、ランドセルの横に貼る。お小遣いを渡す際に、何に使うか簡単な計画を立てる時間を設ける(ノートに書くなど)。これらの小さな工夫は、彼がタスク全体を把握し、自分で段取りを考える手助けになったようです。
重要なのは、彼が困っている時にすぐに答えや手を出さず、まずは「どうすればいいかな?」「どこが難しい?」と問いかけ、自分で解決策を考える余地を残すことです。もちろん、全くできない場合はヒントを与えたり、最初のステップだけ一緒にやってみたりと、適切なサポートレベルを見極める必要がありました。
夫婦での連携と長期的な視点
このような自立支援は、父親一人でできることではありません。妻と「どこまで任せるか」「どのように声かけするか」といった方針を共有し、一貫した対応を心がけることが重要です。お互いの仕事の忙しさを考慮しながら、分担できる部分は分担し、情報交換を密に行いました。
また、自立は一朝一夕に成るものではなく、長い時間をかけて育まれるものです。すぐに成果が出なくても焦らず、子どものペースに寄り添い、小さな成長を見逃さずに喜び合う姿勢が大切だと感じています。失敗しても、「どうすれば次はうまくいくかな?」と一緒に考える機会と捉えるようにしました。
まとめ:焦らず、小さな「できた」を積み重ねる
発達特性のあるお子さんの自立支援は、親にとって根気と工夫が求められる道のりかもしれません。しかし、過保護にならずに自分でできることを一つずつ増やしていく経験は、お子さんの自信につながり、将来の可能性を広げるための大切なステップとなります。
忙しい中でも、朝の数分、帰宅後の短い時間など、日々の生活の中に「自分でやってもらう時間」を意識的に設けてみてください。全てを手伝うのではなく、プロセスを見える化したり、声かけを工夫したりといった小さなアプローチから始めてみてはいかがでしょうか。お子さんの「自分でできた」という達成感は、きっとご家族にとって大きな喜びとなるはずです。