子どもの「できない」を「できた」に変える:父親が試した具体的なサポート術
子どもの「できない」に直面したとき
日々の生活の中で、お子さんが特定のことが苦手だったり、何度伝えてもできなかったりすることに、戸惑いや悩みを抱えているお父さんもいらっしゃるかもしれません。「どうしてこんな簡単なことができないんだろう」「やる気がないのだろうか」と、つい考えてしまうこともあるかと思います。特に、子どもの発達特性に起因する「できないこと」は、その背景を理解していないと、親子の間にすれ違いを生じさせてしまうことがあります。
私たち夫婦も、最初はその「できないこと」にどう向き合えば良いか分からず、試行錯誤の連続でした。今回は、私自身が多忙な仕事の合間に実践し、少しずつですが手応えを感じている、子どもが「できない」から「できた」へと変化するための具体的なサポート方法についてお話しします。
片付けが苦手な息子への向き合い方
私の息子は、物の整理整頓や片付けが非常に苦手です。おもちゃや使ったものを元の場所に戻すのが難しく、部屋はすぐに散らかってしまいます。以前の私は、「早く片付けなさい!」「何度言えばわかるんだ!」と、感情的に叱ってしまうことがほとんどでした。しかし、それでは息子は委縮するばかりで、片付けが進むことはありませんでした。むしろ、「自分は片付けができない子なんだ」という自己否定に繋がりかねないことに気づいたのです。
息子の発達特性について学び始めたことをきっかけに、この「できない」は彼のやる気の問題ではなく、特性による困難である可能性が高いことを理解しました。そこで、アプローチを根本から見直すことにしました。
父親が試した具体的なサポート
私が意識して取り組んだのは、以下の点です。これらは、一度に全てを行ったわけではなく、一つずつ試していったものです。
- 指示を細分化する(スモールステップ): 「部屋を片付けなさい」という漠然とした指示ではなく、「まず、ここにある本を棚に戻そう」「次に、おもちゃ箱から飛び出しているブロックを入れよう」のように、一つずつの具体的な行動に分解しました。息子にとって、何から手をつけるべきかが明確になり、見通しが立ちやすくなったようです。
- 視覚的なサポートを取り入れる: 片付ける場所が分かりやすいように、おもちゃ箱や引き出しに写真付きのラベルを貼りました。「これはここに入れる」という情報が視覚的に示されることで、息子は迷わずに行動に移せるようになりました。また、片付ける項目のチェックリストを作成し、できた項目に自分でチェックを入れるというゲーム感覚を取り入れたこともあります。
- 声かけの工夫:否定形ではなく肯定形で具体的に 「散らかさないで」ではなく、「使い終わったら元の場所に戻そうね」。「早くやりなさい」ではなく、「この時計の針がここにくるまでに、一つだけやってみようか」と、どうして欲しいかを具体的に、肯定的な言葉で伝えました。また、小さなことでも「本の場所に戻せたね、すごい!」「ブロック、ちゃんと箱に入ったね!」と、できた行動そのものを具体的に褒めるようにしました。
- 「一緒にやる」時間を設ける: すべてを息子一人に任せるのではなく、「お父さんも手伝うね」「一緒にやろうか」と声をかけ、数分だけでも一緒に片付けをしました。これにより、片付けは「一人でやらなければならない大変なこと」から、「お父さんと一緒にやる時間」という捉え方に少しずつ変わってきたようです。多忙な中でも、「タイマーを5分セットして、この時間だけ一緒にやろう」といった短い時間でも効果がありました。
- 完璧を目指さない、できた部分に注目する: 部屋が完全にきれいになることを目標にするのではなく、何か一つでも片付けられたらOKとしました。「ここだけきれいにできたね」「これだけ頑張ったね」と、過程やできた部分に焦点を当てて声かけをしました。完璧主義を手放すことは、親自身の精神的な負担を減らすことにも繋がりました。
- 失敗しても責めない: 指示通りにできなかったり、またすぐに散らかしてしまったりしても、「大丈夫だよ、次はこうしてみようか」と、次にどうすれば良いかを伝えるように心がけました。失敗から学ぶ機会として捉え、責めることはしませんでした。
変化と学び
これらの工夫を続ける中で、息子は以前よりもスムーズに片付けに取り掛かれる時間が増え、少しずつ自分でできることが増えてきました。そして何より、「自分にもできるんだ」という自信をほんの少しですが持ち始めたように感じています。
そして、このプロセスを通して、私自身も多くのことを学びました。「できない」背景には、単なる怠慢ではない理由があること、そして、親の関わり方や環境のちょっとした工夫が、子どもの「できた」を引き出す大きな力になるということです。また、子どもと一緒に「できない」課題に取り組むことは、親子の信頼関係を深める貴重な時間でもありました。多忙な日々の中でも、短い時間でできる工夫はたくさんあります。
夫婦での連携も重要
子どもの「できないこと」への向き合い方は、夫婦で情報を共有し、共通の理解を持つことも非常に重要です。お互いが同じような声かけやサポートができるよう、日頃から子どもの様子や試していること、感じていることを話し合う時間を持つようにしています。これにより、親側の対応に一貫性が生まれ、子どもも安心して取り組めるようになります。
まずは小さな一歩から
子どもの「できないこと」に直面したとき、すべてを一度に変えようと思うと圧倒されてしまいます。しかし、「指示を一つだけ具体的にする」「一つの場所だけ一緒に片付ける」「できたことを具体的に褒める」など、まずは小さな一歩から試してみてはいかがでしょうか。
子どもの成長はグラデーションのように少しずつ進んでいきます。「できた!」の瞬間を積み重ねることで、子どもは自信をつけ、次の一歩を踏み出す勇気を得ます。私たち父親にできることは、その小さな一歩をサポートし、見守り、そして共に喜び合うことだと感じています。
この記事が、今、お子さんの「できないこと」に悩んでいるお父さんたちの、何かのヒントになれば幸いです。