朝のバタバタ解消へ:父親が工夫した発達特性のある子の切り替え術
朝の切り替えに苦労していた日々
私には発達特性のある子どもがいます。特に朝の準備は、毎日が時間との戦いでした。「着替えよう」「顔を洗おう」「ご飯を食べよう」と声をかけても、なかなか行動に移せない。好きな遊びに集中していると、声をかけることすら難しいこともありました。
会社員として働く私にとって、朝は貴重な時間です。少しでもスムーズに準備を進めたいのに、子どもは指示が入らない、次の行動に移れない。癇癪を起こすこともあり、私自身もイライラしてしまい、子どもに強く当たってしまった後で後悔することも少なくありませんでした。
妻とも「どうしたらいいんだろう」と話し合いましたが、決定的な解決策は見つからず、朝が来るのが憂鬱に感じる時期もありました。
具体的に試した工夫:視覚的な予告と「実況中継」
ある時、専門家の方から「発達特性のある子は、見通しが立たないことや、急な変化が苦手な場合が多い」という話を聞きました。また、「言葉だけでなく、視覚的な情報が有効なことがある」とも教えていただきました。
そこで、我が家で試した工夫の一つが「視覚的な予告」です。簡単なイラストや写真を使い、「着替え」「顔洗い」「朝食」「歯磨き」「出発」といった朝の準備のステップを紙に書き出し、壁に貼りました。そして、「次はこれだよ」と指差しをしながら声をかけるようにしました。
最初はそれでも抵抗があったのですが、毎日繰り返すうちに、子ども自身も「次はこれだな」と認識しやすくなったようでした。
もう一つ効果があったのは、「実況中継」のような声かけです。「〇〇くん、今はブロックで遊んでいるね。楽しいね。あと5分で着替える時間になるよ」「タイマーが鳴ったら、ブロックはおしまいにして、着替えに行こうね」と、子どもの現状を一旦受け止めつつ、次の行動への予告を具体的に、繰り返し伝えました。
さらに、「さあ、次は着替えだよ。ズボンを持って、右足を入れて…上手だね!」のように、一つ一つの行動を分解し、できたことを具体的に褒めるようにしました。これは、指示として一方的に伝えるよりも、子どもが自分で行動している感覚を持ちやすいようだと感じています。
父親だからできたこと、気づけたこと
多忙な中での子育ては、正直大変です。朝もギリギリまで寝ていたい、早く家を出たいと思うこともあります。しかし、朝の時間を「子どもと向き合う時間」として少し意識を変えてみたことで、私自身も落ち着いて対応できるようになりました。
妻は別の時間帯で子どものケアをすることが多いので、私は朝のこの「切り替え」の瞬間に焦点を絞ることにしました。役割分担を明確にしたことで、お互いの負担も減ったように感じます。
これらの工夫は、すぐに完璧な効果があったわけではありません。今でもうまくいかない日はあります。しかし、「どうすれば子どもが安心して次の行動に移れるか?」という視点で、根気強く様々な方法を試す中で、子どもにとって何が分かりやすいのか、どんな声かけが響くのかを少しずつ理解できるようになりました。
朝のバタバタは完全にはなくなりませんが、以前のような私自身の強いイライラや、子どもの激しい抵抗は減ってきました。これは、私が子どもと「一緒に」朝の準備を進めるという姿勢を持てたからかもしれません。
小さな一歩から始める
子どもの発達特性に向き合う子育ては、試行錯誤の連続です。特に「切り替え」の難しさは、多くの親御さんが経験されることかと思います。
もしあなたが、私と同じように朝の準備に苦労している多忙な父親であるならば、まずは一つ、小さな工夫から試してみてはいかがでしょうか。例えば、次の行動を絵や写真で見せる、タイマーを使って時間の終わりを分かりやすくするなど、できることから始めてみてください。
完璧を目指す必要はありません。今日より明日が、少しでもスムーズになれば、それだけで素晴らしい一歩です。子どもとの信頼関係を築きながら、一緒に朝の時間を乗り越えていく経験は、きっとあなた自身の成長にも繋がるはずです。