公園や習い事で困らない:多忙な父親が試した集団・ルールの声かけ術
集団行動やルール、なぜうちの子には難しいのだろう?
お子様が集団の場で順番を待つのが難しかったり、習い事で先生の指示通りに動けなかったりして、戸惑いや心配を感じたことはありませんか。特に多忙な日々の中で、短い時間で子どもと関わる際に、こうした場面に直面すると、どのように対応すれば良いか悩む方もいらっしゃるかもしれません。
発達特性のあるお子様は、特定の状況やルールに対して、私たち大人や定型発達のお子様とは異なる感じ方や理解をすることがあります。これは、決して「わがまま」や「反抗」からくるものではなく、認知の特性や感覚処理の違い、あるいは先の見通しを立てることの難しさなどが影響している場合があります。公園や習い事のような、予測不可能な要素が多く、暗黙のルールが存在する集団の場では、そうした難しさが表面化しやすい傾向があります。
本記事では、私自身が父親として経験した、集団行動やルール遵守に関する具体的なエピソードと、多忙な中でも実践できた声かけや工夫についてご紹介します。
公園での順番待ち、どう伝えたら伝わる?
我が家の子どもは、公園の遊具で順番を待つのが非常に苦手でした。他の子が滑り台を滑り終える前に登ろうとしたり、「次は僕の番!」と割り込んでしまったりすることが度々ありました。口頭で「順番だよ」「並んで待とうね」と伝えても、なかなか理解できない様子でした。
そこで私が試したのは、「順番」という抽象的な概念を具体的な行動に置き換えることです。
- 視覚的な提示: スマートフォンで「順番待ちリスト」のような簡単なメモを作り、滑り台の横にいる他の子どもの人数を指さしながら「今、3人待っているね。〇〇君の番は、この3人が滑り終わってからだよ」と見せました。
- タイマーの活用: 一人が遊具を使う時間を短く設定し、「ピーとなったら交代ね」とタイマーを見せながら伝えました。視覚と聴覚で時間の区切りを示すことで、待つことの見通しを持たせやすくしました。
- 「立つ位置」の明確化: 滑り台のスタート地点から少し離れた場所に「ここで待つんだよ」という立ち位置を決め、一緒にそこまで移動して待つ練習をしました。
これにより、漠然とした「待つ」という行為が、「この人数が済んだら」「この音が鳴ったら」「ここで立っていれば」という具体的なアクションと結びつき、子どもは少しずつ待つことの意味を理解し始めたように感じます。
習い事のルール、どうすれば守れるようになる?
集団で行う習い事では、座って先生の話を聞く、決められたスペースで活動するなど、様々なルールがあります。我が子も、周りの音が気になって集中できなかったり、体を動かしたくなったりして、席を離れてしまうことがありました。
この時に夫婦で話し合い、私が主導して行ったのは、「ルールの意味を伝える」と「休憩を計画する」ことでした。
- ルールの理由を具体的に説明: 「座って聞くのは、先生の声が聞こえやすくなるためだよ。みんなも先生のお話を聞きたいから静かにしているんだよ」のように、ルールの背景にある理由を、子どもが理解できる言葉で伝えました。
- 「やることリスト」の作成: 習い事の前に、今日の流れや守ってほしいルールを簡単なイラストや短い言葉で書いた「やることリスト」を一緒に確認しました。「最初に座る」「先生のお話を聞く」「体を動かす」「お片付け」といった項目にチェックを入れていく形式にしました。
- 短い休憩の導入: 集中が切れそうなタイミングで、先生に許可を得て短時間(1〜2分)席を立ち、クールダウンする時間を取り入れました。事前に「疲れたら立ち上がって良い場所」を決めておくことで、衝動的に教室を飛び出すことを防ぎました。
先生とも密に連携を取り、「もし集中が難しそうだったら、こんな声かけをお願いします」と具体的に伝えたり、習い事での子どもの様子を共有してもらったりしました。外部のサポートを得ることも、多忙な中で冷静に対応するための重要な支えとなりました。
多忙な父親ができること:小さな工夫の積み重ね
これらの経験から学んだのは、集団行動やルールの理解・遵守は、一度の「言い聞かせ」で習得できるものではなく、具体的なサポートと繰り返しが必要だということです。多忙な父親にとって、子どもとじっくり向き合う時間は限られているかもしれませんが、短い時間でも実践できる工夫はあります。
- 「こうしてほしい」を具体的に伝える: 抽象的な指示ではなく、「順番だよ」ではなく「この白い線の後ろに立って待とうね」のように、具体的な行動を示します。
- 視覚的なサポートを活用する: 文字や絵、タイマーなど、目で見てわかるツールを取り入れます。
- 良い行動を具体的に褒める: 「順番を守れたね」「座ってお話を聞けたね、素晴らしい!」のように、できた行動を具体的に言葉にして褒めます。
- 完璧を目指さない: 最初から全てができるようになる必要はありません。小さな一歩、例えば「今日は順番を一度だけ守れたね!」のように、できた部分に焦点を当てます。
- 夫婦で情報を共有し、対応をすり合わせる: 夫婦間で子どもの状況や試している工夫について話し合い、一貫した対応を心がけることで、子どもも混乱しにくくなります。短い時間の情報共有でも効果があります。
焦らず、できることから始めてみましょう
集団行動やルール遵守は、社会で生きていく上で非常に大切なスキルです。しかし、それを習得するまでの道のりは、発達特性のあるお子様にとっては時に険しいものです。親として焦りを感じることもあるかもしれませんが、お子様のペースに合わせて、具体的なサポートを根気強く続けることが大切です。
今回ご紹介した声かけや工夫は、特別な技術や長い時間を必要とするものではありません。日々の生活の中で、意識的に取り入れられる小さなステップです。まずは一つ、お子様が最も苦手としている場面に焦点を当て、今回ご紹介したような具体的な声かけや視覚的なサポートを試してみてはいかがでしょうか。
多忙な中でも、こうした小さな積み重ねが、お子様が社会の中で自信を持って過ごしていくための大きな力になると信じています。