多様な家族の物語

計画や段取りが苦手な子へ:忙しい父親が試した小さな声かけとサポート

Tags: 子育て, 発達特性, 父親, 具体的な方法, 計画性

計画や段取りが苦手な子へ:忙しい父親が試した小さな声かけとサポート

子育てをしていると、「どうしてこれができないんだろう?」「なぜこんなに時間がかかるんだろう?」と感じる場面は少なくありません。特に、発達に特性のあるお子さんの場合、物事の計画を立てたり、複数のステップからなる作業を順序立てて進めたりすることに難しさを感じることがあります。これは、実行機能と呼ばれる脳の働き(目標設定、計画立案、順序付け、時間管理など)が関係しているためで、本人のやる気がないわけではないことがほとんどです。

多忙な日々の中で、こうしたお子さんの「苦手」にどう寄り合い、サポートすれば良いのか。今回は、私自身が父親として経験した、計画や段取りが苦手な息子への具体的な関わり方についてお話しします。

具体的なエピソード:宿題と持ち物準備での悪戦苦闘

息子が小学生になった頃、特に困っていたのは宿題と翌日の持ち物準備でした。

宿題は、机に向かうまでがまず大変です。「宿題やりなさい」と声をかけても、なかなか始められません。ようやく始めても、どこから手をつけたら良いか分からずフリーズしてしまうこともしばしば。終わったと思っても、ノートがぐちゃぐちゃだったり、計算ミスが多かったりしました。

持ち物準備も同様です。「明日の準備しなさい」と言うだけでは何も進まず、私が横について一つ一つ指示しないと終わりません。「明日の時間割は?」「体育あるから体操服は?」と尋ねても、答えるのに時間がかかり、結局私が全部確認する羽目に。毎晩のこのやり取りが、私にとっても息子にとっても大きなストレスでした。

以前は「早くやりなさい!」「ちゃんとしなさい!」と強く言ってしまい、息子がさらに固まってしまったり、癇癪を起こしたりすることも少なくありませんでした。私自身も、仕事で疲れているのにスムーズに進まない状況にイライラし、「どうして簡単なことができないんだ」と悩んでいました。

試行錯誤の末に見つけた「小さなサポート」

この状況を変えたい一心で、専門家の方からアドバイスをいただいたり、関連書籍を読んだりする中で、いくつかの「小さなサポート」を試すことにしました。

1. 「見る」だけでわかるチェックリスト

口頭での指示が入りにくい息子には、視覚的な情報が有効だと知りました。そこで、宿題や持ち物準備の手順を箇条書きにし、簡単なイラストを添えたチェックリストを作成しました。例えば、宿題であれば「①国語の教科書を出す」「②ワークの○ページを開く」「③問題を読む」「④答えを書く」といった具合です。終わったら自分でチェックを入れさせます。

これは非常に効果がありました。「これを見ながらやってみよう」と声をかけるだけで、以前よりスムーズに作業に取りかかれるようになりました。リストをこなすことで、息子自身も「今、どこまでやったか」を把握できるようになり、達成感も感じられるようになったようです。

2. 作業を「小さく分ける」声かけ

一度に複数の指示を出したり、漠然と「準備しなさい」と言ったりするのをやめました。代わりに、作業を細かく分解して、一つずつ具体的に声かけするようにしたのです。

例:「まず、時間割表を出してみよう」「オッケー。次は、時間割を見て、明日の教科書をランドセルの上に出してみよう」「素晴らしい!じゃあ、次はノートだよ」

このように、非常に小さなステップに区切り、一つ終わるごとに肯定的な声かけを挟むことで、息子は次に何をすれば良いか迷いにくくなり、私の指示も通りやすくなりました。時間がかかっても、一つずつ着実に進めることができるようになりました。

3. 「一緒に最初の数分だけ」伴走する

特に宿題を始める際に効果があったのは、「一緒に最初の5分だけやってみようか」と声をかけ、横に座って最初の問題だけ一緒に読んだり、最初の計算だけ隣で見守ったりすることです。最初の一歩を踏み出すハードルが下がり、エンジンがかかるとその後は自分一人で進められることが増えました。

「早くやりなさい」と急かすのではなく、「一緒にやろう」という姿勢を見せることで、息子も安心して取り組めるようになったと感じています。

得られた学びと父親へのヒント

これらの工夫を通じて学んだのは、計画や段取りの難しさは、やる気の問題ではなく、段取りを組み立てたり、複数の情報を処理したりすることが苦手、という特性から来ている場合が多いということです。そのため、「頑張れ」「ちゃんとしろ」といった精神論ではなく、具体的な「やり方」を視覚的に示したり、作業を小さく分解して示したりする構造的なサポートが非常に有効であるということです。

忙しい日々の中で、これらのサポート全てを完璧に行うのは難しいかもしれません。しかし、今回ご紹介したような「小さなサポート」であれば、わずかな時間でも実践可能です。チェックリストを作るのに少し時間はかかりますが、一度作ってしまえば繰り返し使えます。声かけも、少し意識するだけで変えられます。

また、こうしたお子さんの特性やそれに対する具体的なサポート方法について、夫婦で情報共有し、共通理解を持って関わることも非常に重要だと感じています。お互いが同じ方法でサポートすることで、子どもも混乱せず、安心して取り組めるようになります。

さいごに

計画や段取りの難しさは、大人になってからも様々な場面で影響を与えることがあります。幼少期から、本人にとって分かりやすい方法で「やり方」を学ぶ手助けをすることは、将来的な自立にもつながる大切なステップだと考えています。

全てがすぐにうまくいくわけではありませんが、諦めずに、お子さんの反応を見ながら様々な方法を試してみてください。今回ご紹介した内容が、多忙な日々を送るお父さんたちの、お子さんとの関わり方のヒントになれば幸いです。できることから、少しずつ始めていきましょう。