多様な家族の物語

発達特性のある子の良いところを見つける・伝える:忙しい父親が試した小さな習慣

Tags: 発達特性, 子育て, 父親, 自己肯定感, ポジティブな関わり

子どもの「良いところ」に目を向けることの難しさ

私たち親は、日々の子育ての中で、子どもの成長や発達について様々な期待や心配を抱えています。特に、子どもの発達に特性がある場合、集団行動への適応、学習の遅れ、特定の行動上の課題など、「うまくいかないこと」や「困りごと」に自然と目が向きがちになるかもしれません。

多忙な日々を送る父親としては、子どもと過ごす時間が限られている中で、つい「あれはできたか?」「これは大丈夫か?」と確認や指示に追われ、子どもの良い側面や得意なこと、日々の小さな成長を見落としてしまうことも少なくありません。

しかし、子どもの良いところに意図的に目を向け、それを言葉にして伝えることは、子どもの自己肯定感を育み、親子関係をより良いものにしていく上で非常に重要です。今回は、私自身が多忙な中でも実践できた、「子どもの良いところを見つけて伝える」ための小さな習慣についてお話しします。

「困りごと」ばかりに目がいっていた過去

私の息子は、特定の物事への強いこだわりや、感覚の過敏さといった特性があります。幼い頃から、予定変更にパニックになったり、特定の場所や感触を極端に嫌がったりすることが多くありました。

会社から帰宅すると、妻から聞くのはその日あった「困りごと」の報告が中心になりがちでした。「また給食が食べられなかったらしい」「友達とトラブルになった」「宿題をやるのに時間がかかって、また泣いた」…。そうした話を聞くうちに、私の中での息子のイメージは、「課題の多い子」「手のかかる子」といったものに傾いていきました。

息子と向き合うときも、「今日はこだわりで困ったことはなかったか?」「感覚過敏が出ていないか?」と、ついネガティブな側面にアンテナを張ってしまい、「ダメだよ」「こうした方がいい」という注意や指示が多くなっていました。息子も私に対してどこか構えたような態度をとるようになり、会話も事務的な連絡が中心になっていきました。

小さな意識改革:「良いところ発見」を習慣に

この状況を変えたいと思ったきっかけは、妻から言われた一言でした。「困ったことも多いけど、良いところもたくさんあるじゃない。それ、ちゃんと見てあげてる?」この言葉にハッとさせられました。確かに、課題に気を取られるあまり、息子が持つ本来の良さや、彼なりに頑張っていることを見逃していたのかもしれません。

そこで私は、「良いところ発見」を意識的な習慣にしようと決めました。多忙な自分でも続けられるように、ごく小さなことから始めました。

  1. 「今日の良かったこと」を一つ探す: 毎日、息子と接する短い時間の中で、「今日の息子、ここが良かったな」と思うことを最低一つ見つけると決めました。例えば、「朝、自分から挨拶ができた」「苦手な着替えを最後まで頑張った」「好きな電車の図鑑を集中して見ていた」など、どんな小さなことでも構いません。
  2. ポジティブなレンズで見てみる: これまで「こだわりが強い」と捉えていた面を「一つのことに集中できる」「探求心が深い」と言い換えてみる。「感覚過敏」を「繊細で感受性が豊か」と捉え直してみる。このように、特性をネガティブな側面だけでなく、ポジティブな「強み」として見る視点を持つように心がけました。
  3. メモに残す: 見つけた「良いところ」や「発見」を、スマホのリマインダー機能や簡単なメモアプリに記録するようにしました。後で見返すと、息子の成長や彼の持つユニークな魅力が再確認でき、私自身の気持ちも前向きになれました。

具体的に「伝える」工夫とその効果

「良いところを見つける」だけでなく、それを本人に「伝える」ことも同じくらい重要です。伝える際には、以下の点を意識しました。

これらの小さな習慣を続けるうちに、息子は以前よりリラックスした表情を見せるようになり、私に話しかけてくれることも増えました。私自身も、息子の課題ばかりに気を取られなくなり、子育てに対する肯定的な感情が増えました。

多忙な父親へ:できることから始めてみる

子どもの良いところを見つけて伝えることは、特別な時間や能力が必要なことではありません。多忙な中でも、少しの意識改革と小さな習慣で実践できます。

子どもの発達特性と向き合う子育ては、時に困難や悩みを伴うものです。しかし、子どもが持つ素晴らしい個性や強み、そして日々の小さな成長に目を向けることで、子育てはより豊かなものになります。

あなたも、今日から、お子さんの「良いところ発見」を始めてみませんか。その小さな一歩が、きっとお子さんとの関係に温かい変化をもたらすはずです。